横浜地方裁判所 平成3年(ワ)933号 判決 1992年11月30日
主文
一 被告は原告に対し、一五〇万九〇七二円及びうち一三五万九〇七二円に対する平成二年六月五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告その余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の、その余を原告の各負担とする。
四 原告勝訴部分に限り仮に執行できる。
事実及び理由
第一請求
被告は原告に対し、二五七万三三〇〇円及びうち二一二万三三〇〇円に対する平成二年六月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、普通貨物自動車と衝突して負傷した原動機付自転車の運転者が、加害車両の運転者に対し民法七〇九条に基づき損害賠償を請求した事件である。
一 争いない事実
事故
日時・平成二年六月四日午後四時四三分ころ
場所・横浜市港北区新吉田町七八〇番地先交差点
態様・被告が運転する普通貨物自動車〔右折〕と原告運転の原動機付自転車〔直進〕が衝突した。
二 争点
被告は損害額を争うほか、原告にも前方の安全確認を怠つた過失があるとして過失相殺(五割)を主張する。
第三争点に対する判断
一 原告の治療経過
証拠(甲二、四、一二)によると、次の事実を認めることが出来る。
原告は事故当日の平成二年六月四日、高田中央病院を受診し、頭部外傷、右膝・左足・下口唇挫創、背部打撲、歯牙損傷と診断され、同月六日まで三日間通院し、同月八日、久保内病院に転医した。
同病院では下口唇裂傷、両膝足部擦過傷と診断され、同年七月一〇日まで通院し、治療を受けた(実日数一三日)。加療終了時点で「疼痛なお残存す」とされている。
また、同年六月一八日から七月六日まで古市歯科医院に通院して打撲による歯牙破折の治療を受けた(実日数四日)。
二 損害額
1 治療費 二四万四四三〇円
争いがない。
2 診断書料〔請求額一万五三六〇円〕 九一八〇円
甲六、一一により認める。
3 事故証明 六〇〇円
甲一〇により認める。
4 通院交通費〔請求額一二万六六四〇円〕 二万円
弁論の全趣旨により通院一日当たり一〇〇〇円、合計二万円を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
5 休業損害〔請求額五四万六〇〇〇円〕 二七万三〇〇〇円
証拠(甲一四、原告)によると、原告は平成二年五月二一日から、焼鳥屋の鳥笹綱島店こと安江孝次方で週に六日、時給一〇〇〇円で七時間アルバイトをしていたが、本件事故のため同年九月二日まで休み、以後週に二日くらい手伝つていたことが認められる。アルバイトを始めてから日が浅いことを考慮し、原告主張の休業日数七八日の二分の一に当たる三九日分、二七万三〇〇〇円を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
6 逸失利益〔請求額四五万円〕 四五万円
証拠(甲二二、二四~二六、乙三、原告)によれば、原告は国学院大学幼児教育専門学校の生徒であつたが、リトミツク科目の出席が単位認定基準の八時間に満たなかつたため、平成三年三月八日、同校の卒業判定会議で留年と決定され、卒業、就職が一年遅れたこと、原告は医師の指示により、事故後平成三年一月上旬まで電車通学を避けて、父又は友人の自動車に同乗して通学していたこと、リトミツク科目の欠席の理由は別表記載のとおりであることが認められる。
右の事実によれば、原告の卒業遅延は本件事故により通常生ずることあるべき範囲内のものであつたと判断される。そこで、原告は賃金センサス平成二年第一巻第一表女子労働者新高卒二〇~二四才の年収額二三九万三〇〇〇円相当の収入を失つたものというべきところ、その範囲内である右請求額を認めることとする。
7 授業料・通学定期代〔請求額三六万二九〇〇円〕 三六万二九〇〇円
甲一八、一九、二二、原告により認める。
8 卒業旅行・卒業式用貸衣装キヤンセル料〔請求額二〇万円〕 二〇万円
甲二二、原告により認める。
9 慰謝料〔請求額二三万円〕 二三万円
前記通院期間その他本件の諸般の事情に照らして二三万円を相当と認める。
10 車両損害〔請求額一〇万一九三〇円〕 一〇万一九三〇円
甲一五、一六により認める。
三 当事者の過失割合
証拠(甲一七、乙二)によると、本件事故現場付近の状況は別紙交通事故現場見取図記載のとおりであるところ、被告は加害車を運転して同図高田町方面から新羽町方面へ、ほぼ交差点を右折する形で進行したが、同図<3>、<4>、<5>と左右を見ながら進行したため前方注視がおろそかとなり、衝突寸前の<6>地点まで原告を発見できず、そのまま衝突したこと、原告は時速約三〇~四〇キロメートルで新羽町方面から綱島方面へ、ほぼ交差点を直進する形で進行し、道路左側の障害物を避けて道路中央へ進出した時点で前方に被告車両を発見し急ブレーキをかけたが、そのまま進行して来た同車を避けられず、これと衝突したことが認められる。この事実によると両者の過失割合は、おおむね原告二対被告八とするのが相当である。
四 損害の填補 一五万四五六〇円
争いがない。
以上の事実を前提とすると、被告が支払うべき損害額は一三五万九〇七二円となる。
五 弁護士費用中一五万円を、本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
(裁判官 清水悠爾)
リトミツク教科の出欠実態
<省略>
交通事故現場見取図
<省略>